
コンビニ経営を始めるときに多くの人が頼りにするのが「フランチャイズ本部」。
店舗運営のノウハウやブランド力、仕入れシステムなどを利用できるのは大きな魅力です。
契約書には書かれていない本部とのリアルな関係
しかし実際に運営を始めてみると、契約書には書かれていない「本部との力関係」が見えてきます。
オーナーと本部の対立や不信感が問題になるケースも少なくありません。
この記事では、元店長の視点からフランチャイズ契約の裏側と、本部とのリアルな関係性をお伝えします。
これから契約を検討している方は、必ず知っておくべき内容です。
本部とオーナーの力関係は「圧倒的に本部が上」
まず理解しておきたいのは、フランチャイズ契約は「対等なパートナー契約」ではないという現実です。
表向きは「独立支援」「共同経営」と言われますが、契約内容を見ると、オーナー側の自由は極めて限られています。
たとえば、
- 商品の仕入れ先や販売価格は本部が一方的に決定
- 廃棄ロス(売れ残り)の負担はすべてオーナー
- 売上に対するロイヤリティ(手数料)は固定率で徴収
- 独自キャンペーンや値引き販売は原則禁止
つまり、実質的には「本部の社員として自腹で店舗を運営している」ような立場になりがちなのです。
ある元オーナーは、「加盟金を払って自由を得るつもりが、実際は縛られただけだった」と語ります。
契約時には「オーナー=経営者」としての自覚と同時に、本部のルールに従う従属的立場である現実を理解することが必要です。
よくあるトラブル①:廃棄ロスとキャンペーン強制
最も多いトラブルのひとつが、廃棄ロスに関する責任の所在です。
弁当や惣菜など、賞味期限が短い商品が売れ残った場合、基本的にその損失はオーナー負担。
さらに、本部が行うキャンペーン(例:おにぎり100円セールなど)も、実際の原価差額は本部が負担せず、オーナーの実質持ち出しになるケースが多いです。
「売上は伸びても利益は減る」──この矛盾が現場の大きなストレスになります。
一部では、こうしたキャンペーン強制をめぐってオーナーと本部の訴訟に発展した例もあります。
よくあるトラブル②:人手不足でも「オーナー責任」
人手不足の中で、夜勤スタッフが見つからないとき、本部は基本的にサポートしてくれません。
契約上、「オーナーが自ら店舗を維持する義務がある」とされているためです。
あるオーナーは、バイトが急に辞めた際、2週間連続で夜勤をこなした結果、過労で倒れたと話します。
しかし本部の答えは「代わりを立てられないのはオーナーの責任」。
補償や人員支援は一切ありませんでした。
このように、現場の負担が一方的にオーナー側に押しつけられる構造が、トラブルの温床になっています。
よくあるトラブル③:契約解除・更新の壁
フランチャイズ契約のもう一つの落とし穴が「契約期間」です。
多くの場合、初回契約は10年~15年。
途中解約を希望しても、違約金が数百万円単位で発生することがあります。
また、契約更新時に条件が変更されることもあり、
「ロイヤリティ率の引き上げ」
「営業条件の追加」
などを突きつけられて、実質的に継続が困難になるケースも。
中には、更新時に「本部指定の改装費(数百万円)」を求められることもあり、経営が厳しいオーナーほど本部に依存せざるを得ない状況に追い込まれます。
フランチャイズ契約で注意すべき3つのポイント
本部とのトラブルを防ぐには、契約書を「形式的に読む」のではなく、経営リスクを具体的に想定して読むことが大切です。
特に次の3点は必ずチェックしてください。
- ロイヤリティの算出方法
→「売上総額に対して」か「粗利益に対して」かで、収益構造が大きく変わります。 - 廃棄ロス・値引き損の負担者
→オーナー負担になっている場合、利益率が極端に低下します。 - 契約解除・更新の条件
→違約金や更新料の有無、期間満了後の扱いを必ず確認しましょう。
契約内容を理解しないままサインすると後から、
「聞いていなかった」
「そんなはずじゃなかった」
と後悔することになります。
本部との関係を「良好に保つ」ためのコツ
もちろん、すべての本部が悪いわけではありません。
中には、オーナーの意見を尊重し、柔軟な支援体制を整えている企業もあります。
本部との関係を良好に保つには、次の3つを意識しましょう。
- 報告・相談をこまめに行う(信頼関係を築く)
- 数字で話す(感情ではなくデータで交渉)
- 地域のオーナー同士で連携する(情報共有)
「本部に従うだけ」ではなく、対話できる経営者としての姿勢を持つことが、長期的に安定した店舗運営につながります。
まとめ:契約前に「本部と対等に話せるか」を見極めよう
コンビニ経営は、単なるお店経営ではなく、本部との関係をマネジメントするビジネスです。
売上・人材・在庫・契約──あらゆる面で本部の影響を受けるため、
「誰と組むか」
「どの本部を選ぶか」
が、成功と失敗を分ける最大のポイントになります。
契約書にサインする前に、必ず以下の点をチェックしましょう。
- 加盟説明会だけで判断しない
- 契約書の条項を弁護士や専門家に確認してもらう
- 現役オーナーに直接話を聞く
フランチャイズは、仕組みを借りるビジネスではありますが、最終的に責任を負うのはあなた自身です。
現場を知り、契約を理解し、本部と対等に話せる準備を整えてから
それが、後悔しないコンビニ経営の第一歩です。





